立原正秋「帰路」
立原正秋「帰路」を読みました。
面白かったー!
表紙絵が、夭折した画家の有本利夫さんの作品です。
古い本は細部までこだわった美しいものが多いですね。
立原作品の遺作となる今作。発表されたのが昭和55年なので、まだ私が産まれてもいない・・なんか自分が存在しない時代の小説を読むとき、今この時に過去のものを読んでいるっていうのが毎度不思議で面白いなって思います。映画とかドラマとかも古い作品はあるけれどそれらは沢山の人が関わっている、でも小説は小説家その一人だけが作り出したものなので、より近くに感じるというのかノスタルジーを感じちゃいます。
美術商を営んでいる大類は、お店に出入りしている知り合いの女性2人を連れてヨーロッパに仕事や用事のために出かける。
その時にふと12年前に、アメリカ人女性と一緒にスペインで一緒に過ごした時期を邂逅して、あの時と今でヨーロッパに対する向き合い方の違いを冷静に見極めたいと感じるようになる。
妹のように思っていた磯子から気持ちを打ち明けられ、受け入れることにしたことをきっかけに二人でヨーロッパに赴き・・という話。
もうねー、この主人公の大類って人よ!!
博識で泰然自若としていて、物事を冷静に見つめる落ち着いた男なんです。
こんな人が実際にいたら、ほとんどの女性が引き付けられて恋に落ちてしまうと思う。
少しだけ男の狡いところもあるんだけど、悔しいけれど、いい男だと認めざるを得ないです・・こんな男性なら、私も惚れるわ(悔しいけどね)
古い作品は、とにかく言葉遣いが綺麗でいいのよね。
アメリカなどの翻訳本を読んでいると、まあ言葉遣いの悪いこと(でもそこが面白いところでもある)。日本語の美しさを堪能できるので、古い本を読むことがやめられません。
今回は、磯子との関係がゆっくり進みながらも、軸となるのは大類の主張が主になっていました。大類=作者さんなところあるよね、きっと。美食家だし、海外かぶれを嫌うところとか。
あと作家さんが朝鮮半島で生まれた後、結婚して日本国籍を取得した背景があるので、そういうところで日本の伝統文化への気持ちが強くなったり、海外に行ってフランスかぶれやヨーロッパかぶれになる人を嫌う傾向があるのかなと思いました。
30年くらい前だったら、ヨーロッパかぶれとか多そうだけど、今はどうだろう?
当時と今では考え方が異なっていると思うので、その違いを考えながら読むのも楽しかったです。
しかし大類は海外かぶれを嫌いながらも、ヨーロッパの事情に詳しいことよ。
作家さん、実際に向こうにいた期間が長かったりしたのかな。
「帰路」というタイトルだけど、結局、大類は死ぬまでヨーロッパに何度も訪れて、向こうで骨をうずめることになったのかもしれないと考えました。小説では描かれてないんんだけどそんな未来があっても驚かない感じ。
私ももう海外はいいやって思っているんだけど(タイだけは別ね・・ジランがいるから)、何十年かたって、過去に滞在した場所を来訪して、あの時はこうだったとか思い出に浸るのもいいかと考えました。海外に限らず、日本国内でもそれは同じか。
