貴志祐介「梅雨物語」

ピーナッツ
貴志祐介「梅雨物語」を読みました。
梅雨物語 (角川書店単行本)
梅雨物語 (角川書店単行本)
KADOKAWA
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とても面白かったです。


以前「秋雨物語」を読みましたが、そちらも面白かったのですが、この「梅雨物語」はさらに面白かった。

秀逸という言葉が手軽に使われるようになったので、安易に使いたくなくてめったに使うことはなくなったのですが・・この作品には使いたい。秀逸です、特に収録されている3編のうち、1作目は名作だと個人的に感じました。


1作目は、「皐月闇」

元中学教師の作田の元に、教え子だった女性が訪れる。

句集の解釈をしてほしいとお願いされるうちに、様々な記憶が蘇ってきて‥という話。


句の解釈の仕方も読みどころですが、それ以上に、犯罪の加害者が何度も何度もあの時の記憶を蘇えらせられて、贖罪の気持ちに苛まれるということが、これこそが罰だよな‥と思いました。

おそらく作田って男は、こういうことはしてはいけないと理性ではわかってるんだけど、やめられないんだよね(性犯罪ってそういうものらしい)。だから後悔はしているし、後ろめたい気持ちを自分だけでは抱えられない。

でもその中には少しだけかもしれないけれど、自分のやったことを誇示したいという醜い部分もあるから、句を作ったんだろうね。

そんな醜い自分を毎回突き付けられるんだから、刑罰以上の罰を与えられているんだろうと思った。

いやーこの作品、素晴らしいですわ。



2作目と3作目は、「さかさ星」に登場したキャラがいます!!


2作目は、「ぼくとう奇譚」

美武は、頻繁に黒い蝶が登場する夢を見ていた。

ある時、銀座にあるカフェー(今のカフェではなく昔の女給がいる酒飲み喫茶のようなもの)に行ったら、そこにあるガラスの器に夢で見たのとよく似た黒い蝶が描かれていた。

気になりながら店を出ると、怪しい修験装束に身を包んだ僧侶に呼び止められて、このままでは命を落とすと言われ‥という話。


「さかさ星」に登場した日震が登場。

幻想的な虫の世界に入り込んで、結局は美武は気が狂ってしまうんだけど、その過程が面白いです。

私が笑ったのは、花魁の美しい女性が並んでいた中で、2人が陰間だったこと!

蝶が化けて出てたんだけど、貴志さん遊び心あるな~と怖い話なのに、くすっと笑えた。

こちらも性的倒錯者が懲らしめられる話でした。


話は違うのですが、この作品には沢山の昆虫が出てきましたが、数年前に家庭菜園でプランターにトマトを植えていたのですが、その苗にスズメガの幼虫がついていました。

みるみるうちに大きくなっていくし、👀が2つある生物には弱い私・・・(👀があると、生物として認識しちゃうんですよね)

殺処分することができず、トマトももう収穫しなくていいや~と思って、スズメガを育てることに専念にしました。空気穴があるビニールで覆って・・そうしたらさらに大きくなって、蛹になる前に地中にもぐっていきました。

これまで幼虫が地上で生きて、蛹が地中にもぐることがあるって知らなかったので衝撃でした。

しかしその後、いつの間にか蛹から孵化したようで、旅立っていきました(時間がたって土をバラしても、何もなかったので)旅立ったところ見たかったな~



3作目は「くさびら」

こちらも「さかさ星」に登場した賀茂禮子さんがいます!


長野で暮らしている工業デザイナーの杉平は、妻と息子の3人暮らしだったが、2週間前に妻と喧嘩をした。

東京で仕事をして帰宅すると、妻は息子と家を出ていってしまい、LINEでしか連絡が取れない状態だった。

ある日、庭に赤いキノコを見つけ、それからどんどん庭には色んなキノコが生えてくるようになる。しかしキノコは見えるが触ることができないことに気づき、学生時代の友人(女性で山伏をやっている。しかも有名証券会社出身とか、設定が遊び心あり過ぎ^^)に相談をするが‥という話。


オカルトなのか、精神疾患なのか、どういうジャンルの話?と疑問に感じながら、楽しく読めた作品。最後まで読んでみたらわかるのですが、ミステリー作品だった。

終わり方がとても切なく悲しい・・あの2つの親子キノコが消えていく情景が目に浮かぶようでした。生者が死者を忘れるのではなく、死者が生者を忘れるのだ・・名言じゃないですか?

ますます貴志作品のファンになりました。

おすすめの本です!!

「さかさ星」もシリーズ化してほしい!!