アンソニー・ホロヴィッツ「マーブル館殺人事件・下」

ピーナッツ

アンソニー・ホロヴィッツ「マーブル館殺人事件・下」を読みました。

マーブル館殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)
マーブル館殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)
東京創元社
Digital Ebook Purchas

とても面白かったです。


完成度が高い、とても満足できる作品でした。

何が特に良かったかというと、主人公のスーザンが幸せになれたこと!!

もう最初から最後まで、スーザンの処遇が気の毒で気の毒で・・彼氏と別れてイギリスにもどってきた後、逆恨みされるわ、編集の仕事はくだらなものを押し付けられるわ、さらには殺人容疑までかけられて。

私動物大好きなので、スーザンの飼い猫が襲われたときは、怒りで失神しそうだったわ。

小説といえど、動物虐待は自分の中では大きな地雷です。

ネタバレになるけれど、最後は素敵なパートナーもできるし、出版社も立ち上げることができたので、読み終わって幸せな気分になりました。

この作家さん男性なのに、このスーザンシリーズは女性作家が書いている気がしてしまう。それくらい女性の感性を知り尽くしているというのか、これも才能なんだろうね。


本格ミステリですから、犯人は誰か?と考えながら読む楽しみがしっかり味わえます。

スーザンに嫌がらせをしている人は、あの刑務所から出た後の電話から聞こえたインターホンでわかったんだけど、殺人犯は誰か?というところは、自分は正解までたどり着けなかった。悔しい!

ミリアムが精神的なことで病院に入ったという描写は、おそらくそこで子どもを産んだんだろうなと予想がついた。あと黒人運転手と仲良かったというところも、あれ?と思ったんだけど、まさかミリアムと出来ていたというのは思いつかなかった。

あと真犯人が、ミリアムの子供なのではというのはというのもちらりとよぎった。

かなり推理小説読みこんでいるので、さりげなく書かれていることも、これ大事なことでは?と疑ってしまうのが、いいのか面倒なことなのかわからないけれど。

入れ子構造になっているので、2つの事件を推理するのはとても楽しかったです。

反面、登場人物の名前を覚えるのは大変だよね^^;


ホロヴィッツさんはユダヤ系の人だということで、ドイツのナチスの件が出てきました。

こういうのは、やっぱり自分のルーツに関わることだから書きたいのかなと思ったし、ヨーロッパではナチスに奪われたものを取り返すことって、今でも行われてますね。

私もさ・・英国にいたとき、某パレードに参加したことあるんです。

そのパレードは現在では多国文化交流を目的としてるんだけど、最初に始まったきっかけは軍事パレードだったの。

その時、そのパレードを見に行くと話したら、学んでいたドイツ人教授から、自分はあんなもの絶対に行かないって話してて、日本人である私は本当に恥ずかしい思いをしました・・穴があったら入りたいということを実感したのは、あれが最初で最後かも。日本もアジア諸国に多大な迷惑をかけてますからね・・私が通ってた小学校は結構特殊で、戦争について学ぶ時間っていうのがおそらく他の小学校より多かったんだよね。修学旅行も広島で、そこに行った高学年のお兄様お姉さまから話を聞くという試みもあったりして(私は途中で転校したので、修学旅行は奈良京都だったんだけど。いつか広島には行ってみたい)

だから戦争については結構学んでたつもりだったけど、ドイツ人教授にはっきりそう言われちゃうとね・・冷や汗かきましたわ。


話は戻って、この本に出てくる人たち、キャラ濃すぎ!!

スーザンはもしかしたら人によっては出張りすぎなキャラだと思うかもしれないけれど、私はこういう人生を一生懸命に生きている女性は大好き。

そしてエリオットが不憫だった・・・

エリオット、時には憎たらしいし、経済的には恵まれているんだけど、徹底的に運に見放されている感じが悲しくてしょうがなかった。駄目なときは駄目なのよ・・波に身を任せるしかない。

犯人に対しても、悲しいという感情しか沸いてこなくて・・


終盤に向けて、読んでいると頭の中が雲で覆われたようなどんよりした雰囲気に見舞われるんだけど、最後はスーザンの心が晴れ晴れとしていて、その緩急のつけ方とかがとても上手な作品だと思いました。

いや、この作家さんの才能は本当に恐るべきものです・・

本格ミステリとしての、最後に明らかになる犯人は誰かという驚きは今回はそれほど大きくないかもしれない。だけどこの本は、そこにスポットライトをあてているのではなく、スーザンの生き方に重きをおいていたので、すごくよく出来た作品だと自分は思いました。

スーザンシリーズ、これでも終わり方と思いきや、もう1作は確実にあるとのことなのでとても楽しみです。まだ執筆すら始まっていないようだけど、今からワクワク。