エリック・シャクール「あなたについて知っていること」

ピーナッツ

エリック・シャクール「あなたについて知っていること」を読みました。

あなたについて知っていること (集英社文芸単行本)
あなたについて知っていること (集英社文芸単行本)
集英社
Digital Ebook Purchas

とても面白かったです。


本を購入するときって、作家買いやあらすじ買い、ジャンル買いなど色々あると思うのですが、この本はジャケット買いでした。

装丁の絵に惹かれて、中身を確認せずに衝動買い。

こういう装丁、大好きなんですよね。

異常【アノマリー】/エルヴェ ル・テリエ
異常【アノマリー】/エルヴェ ル・テリエ
GENERIC
おもちゃ

この「異常」という本の装丁を見たときにもかなり興奮したのですが、今回もこれは絶対に面白いぞ!って思って選びました。こういうセンスある装丁を作る人たちって凄いですよね。表紙絵を並べるだけで、気分良くなります。



そしてこの本、中身も素晴らしかったです。自信を持っておすすめします!


最初は、「あなた語り」っていうの?この文体が新鮮で珍しくて、慣れるまで大丈夫かなって思ったけれど、読みにくくはないのでOKでした。

この「あなた語り」は、後半の展開に必要だったんだなと納得させられるものだし、緻密に練り上げられているんだなって最後まで読むとわかります。


あと「レヴァント」と呼ばれるコミュニティの雰囲気や、エジプトの政治情勢などが描かれていますが、私全然知識がなくて。

中東にも旅行に行ったことがないし、移民に関することも描かれていて、知らないこと多いなって思いました。エジプトの歌とかも聞いてみたいなあ。

結構中東の人たちの顔が好みなんだよね^^;イギリスの大学に在籍していたとき、PCを教えてくれたのがイラク人でさ。私結構お熱上げてました。


そして同性愛要素も含まれていますが、それほど過激でもないし、BLを腐るほど読んでいる私としては純愛だなとも思ったり(←過激BL読み過ぎの弊害だわ)

ただ中東などイスラム圏では同性愛って禁忌でしょ?だから何か暴力的に迫害されてしまうんじゃないかとドキドキしました。

でも注目すべきは同性愛や恋愛などそういう点ではなく、私が心に残ったのは、女性達の強さかもしれない。

「ミラ」だけ特別に色んな表現がなされているのも面白いし、祖母が息子のために動いたことで、結果的に息子と今生の別れになったことを心から受け入れて嘆いたりしないこと。そして家政婦さんがちょうどよい塩梅で、動いてくれることなど。誰一人欠けても、この物語は動かない。

ミラと義母の関係が良好っていうのも、好きだった。

女性陣がとても強くて魅力的に映りました。


さらに面白いのが、最後の最後で明かされるんだけど、これまでずっと読んできた物語は(正しい)真実であるかどうかがわからないこと。

断片的なことをつなぎ合わせて物語にしているけれど、それは果たして真実だったのかどうかがわからないっていうのが、憎いなー!!

もしかしたら夫婦で連絡を取り合って子供のことを相談したことがあったかもしれないし、いつから連絡を取り合うことになったのか、連絡は全く取りあっていなかったのかもはっきりと明かされていない。読者に想像させるところも十分に残していて、これは読めば読むほど深い小説だなと思いました。


アリーよ・・・私、もしかしたらアリーが母親と同じ病気になっているかもしれないとは予想していたけれど、もしかしたら生きているんじゃないかって少し願っていたんです。

アリーはおそらく気高く生きて自分の命を終わらせたんだろうけれど、それでもターレクと一度でも再会できていたらなあと思いました。


しかし、これが作家さんのデビュー作??すごいわ~

この本を翻訳したいって行動してくれた翻訳家さんにも大感謝です。

こういう素敵な本に出合うと、やっぱり幸せな気持ちになれますね。